光
三浦 しをん
09−035 ★★★☆☆
【光】 三浦 しをん 著 集英社
《暗闇に向かう光とは、…》
内容(「BOOK」データベースより)
天災ですべてを失った中学生の信之。共に生き残った幼なじみの美花を救うため、彼はある行動をとる。二十年後、過去を封印して暮らす信之の前に、もう一人の生き残り・輔が姿を現わす。あの秘密の記憶から、今、新たな黒い影が生まれようとしていた―。
子ども時代の共有性を描いたのは、東野作品を思い出すが。どうもこういう話は好きでない。人間の持つ内面を描くときに子ども時代の影響を出さずにはいかないのか。こういう人間の内面は、ロシア文学から日本にも定着してきたことだと荒川さんの本に書いてあったような気がする。ここでは暴力という形で表現されている。身体に与える暴力、精神に与える言葉の暴力、いろいろな暴力が取り上げられている。『暗闇に向かう光』もあってよいと解説を読むと出ていたが、光は明るいとは限らないのだ。人間は不幸な生き物だ、小さい生き物(蟻・蚊)など何も考えないで捻りつぶす、大きい生き物だとそれはしない。残忍性は誰でも持ち合わせている。どこまでの暴力が許せられるのか、どこかでバランスをとって生きているのか。でも、どうしてこんな作品をしをんさんは書くのだろうか。