東京公園
小路 幸也
07−29 ★★★★☆
【東京公園】 小路 幸也 著 新潮社
《ファインダー越しに見る、柔らかな恋とは、……》
内容(「BOOK」データベースより)
「幼い娘と公園に出かける妻を尾行して、写真を撮ってほしい」―くつろぐ親子の写真を撮ることを趣味にしている大学生の圭司は、ある日偶然出会った男から奇妙な頼み事をされる。バイト感覚で引き受けた圭司だが、いつのまにかファインダーを通して、話したこともない美しい被写体に恋をしている自分に気づく…。すれ違ったり、ぶつかったり、絡まったりしながらも暖かい光を浴びて芽吹く、柔らかな恋の物語。
この本は、好きだ。
私が趣味と大袈裟に言えないが、写真だからである。主人公・圭司がカメラマンを目指す大学生なので、題名の公園というより写真の方が合っているのかも知れない、と私は思ってしまった。
いい写真にはね、
「ホントの気持ち」が写っちゃうんだよ。 (帯文より)
人間はファインダー越しに嘘はつけない。カメラマンが切り取ったその一瞬は、確かにその人の本当の姿を伝えているんだと思っている。 (本文より)
写真・ファインダーから見られるものは何か。家族というものの本当な姿を見つけ出せるか。公園に出続ける親子をファインダーから何を感じ取るのか。全体に流れる雰囲気が良い本だ。主人公・圭司、姉・咲実、ヒロ、真山、夫・初島、妻・百合香、娘・かりんちゃん、そして富永ちゃんがいい味を出しています。静かに暖かいものが込み上げてくる本だった。
ここに出てくる映画をほとんど見ているのもポイントが高い。
<小さな恋のメロディ> <修羅がゆく> <Lost in translation> <ビルリン・天使の詩> <Coffee and cigarettes>
ここに出てくる公園も書いておく。
<水元公園> <日比谷公園> <砧公園> <洗足池公園> <世田谷公園> <和田掘公園> <行船公園> <井の頭公園>