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    2006年の1年

    • 2006.12.31 Sunday
    • 23:21
     今年は、随分読んだ。
     後半、日に1冊読んでいたことになる。
     330冊、その中に、初めて読む作家さんも多数読んだ。
     ◎は、8冊である。やはり結果的には男性作家が多い、読んだのは女性作家が多かったのに。
     ◎【風が強く吹いている】三浦しをん著は、抜群に面白く、巧い、これを書くのに4,5年過かっているのを聞いて納得した。
     ◎【石の来歴】奥泉 光 著、◎【贋世捨人】車谷長吉 著などは、骨太の話である。
    どうも最近の作家さんの作品は、カルク感じてしまうのだ。
     ○【天使の代理人】山田 宗樹 著は、思い出に残る1冊である。【嫌われ松子の一生】を読んで、この作家さんを知ったのだが、【天使の代理人】は、若い人たちに読んで欲しい1冊である。堕胎のことを扱った作品である。
     やはり、ミステリーがどうも苦手である。
     来年は、どんな本に会うか楽しみである。



    ★★★★★
    ◎【流星ワゴン】重松 清 著
    ◎【その日のまえに】重松 清 著
    ◎【将棋の子】大崎 善生 著
    ◎【石の来歴】奥泉 光 著
    ◎【贋世捨人】車谷 長吉 著
    ◎【邂逅の森】熊谷 達也 著
    ◎【風が強く吹いている】三浦 しをん 著
    ◎【途方に暮れて、人生論】保坂 和志 著



    ★★★★☆
    ○【四日間の奇蹟】浅倉 卓弥 著

    ○【人生ベストテン】角田 光代 著
    ○【完璧な病室】小川 洋子 著
    ○【天使の代理人】山田 宗樹 著
    ○【対岸の彼女】角田 光代 著
    ○【一千一秒の日々】島本 理生 著
    ○【看守眼】横山 秀夫 著
    ○【執筆前夜】アンソロジー 著
    ○【海のふた】よしもと ばなな 著
    ○【ツ、イ、ラ、ク】姫野 カオルコ 著
    ○【桃】姫野 カオルコ 著
    ○【ラッシュライフ】伊坂 幸太郎 著
    ○【Presents】角田 光代 著 松尾 たいこ 絵
    ○【香港の甘い豆腐】大島 真須美 著
    ○【いつかパラソルの下で】森 絵都 著
    ○【いつも旅のなか】角田 光代 著
    ○【シュガータイム】小川 洋子 著
    ○【風に舞いあがるビニールシート】森 絵都 著
    ○【讃歌】篠田 節子 著
    ○【死亡推定時刻】朔 立木 著
    ○【臨場】横山 秀夫 著
    ○【孤宿の人】宮部 みゆき 著
    ○【クローズド・ノート】雫井 侑介 著
    ○【ケッヘル】中山 可穂 著
    ○【人生激場】三浦 しをん 著
    ○【僕たちの戦争】荻原 浩 著
    ○【夜市】恒川 光太郎 著
    ○【ボーイズ・ビー】桂 望実 著
    ○【手紙】東野 圭吾 著
    ○【最後に咲く花】片山 恭一 著
    ○【冷めない紅茶】小川 洋子 著
    ○【花まんま】朱川 湊人 著
    ○【ボトルネック】米澤 穂信 著
    ○【走るジイサン】池永 陽 著
    ○【まほろ駅前多田便利軒】三浦 しをん 著
    ○【一瞬の風になれ】佐藤 多佳子 著
    ○【凍】沢木 耕太郎 著
    ○【雲を斬る】池永 陽 著
    ○【きよしこ】重松 清 著
    ○【ありふれた魔法】盛田 隆二 著
    ○【王国 その3 ひみつの花園】よしもと ばなな 著





    野の風  辻内 智貴

    • 2006.12.31 Sunday
    • 15:37
    野の風
    野の風
    辻内 智貴
     334 ★★★☆☆
     【野の風】 辻内 智貴 著  小学館

     《故郷のなかに哀愁を感じる》

     出版社/著者からの内容紹介より
    ロングセラー「セイジ」著者待望の最新作
    『セイジ』が累計10万部の書店発超ロングセラーとなっている辻内智貴氏の最新刊です。性善説に近い場所から発信される、簡潔さ、清新さ、温かさを通奏低音として持つ氏の作風は本作でも健在であり、読後、タイトル通り、ふっと風が通り過ぎる様を感得することのできる作品です。夏。仕事中心の日々を送る会社員・宇田川勇一は、打ち合わせ先で、父が病に倒れたことを知る。妻、そして心を閉ざしてしまった息子とともに急ぎ広島へ帰郷する勇一だったが、すでに脳死状態と医師に宣告された変わり果てた父の姿に絶句する。元気だった頃、「鳥はええぞお。わしは今度は鳥に生まれかわってくるけえの」そういっていた父の言葉が胸に突き刺さる。勇一はある選択を決意する。


     ただ、手に取って読んで見る。
     じんわりして懐かしくなる小説だ。
     都会とは、田舎とは、…。
     家族って、何かを感じさせる。
     親子愛、兄弟愛、子供愛、教え子愛、そこには昔の家族の風景がある。
     辻内作品には、子供ころの近所のお兄さんが出てくる、その人がやっぱりいい味を出しています。

     病室で主人公・勇一が脳死状態の父親に語りかける。
     (……きいた風な事を言ってるかい?……だけど、こうしていると、それが、良く分かる気がするんだ……都会で仕事漬けになっていると、それに気付けないよ……いや、都会ばかりじゃ無い、……そんな毒が、もう、この国じゅうを覆い尽くしかけている様にも思うよ……英一のような子供の中まで、それは、もう、入りこんでいるんだ。……このまま行けば、今に世界中が、一個の「欲望」になってしまうんじゃないかな。……妙な話さ、「欲望」が「欲望」ただ一つの存在になってしまったら、……その欲望を充たすものを、欲望は、一体、何処に探すつもりなんだろう。……何時か、そんな矛盾に灼かれて、……世界ごと壊れて行くのかな………俺達は、……そういうことを、やっているのかな……) (本文より)

     「ナコちゃん」も超短篇でアッタカクて良い。

    途方に暮れて、人生論  保坂 和志

    • 2006.12.30 Saturday
    • 20:20
    途方に暮れて、人生論
    途方に暮れて、人生論
    保坂 和志
     333 ★★★★★
     【途方に暮れて、人生論】 保坂 和志 著  草思社

     《読んで、じっくり噛締めて、何かを感じる本だ》

     内容(「MARC」データベースより)
    「希望」なんて、なくたっていい-。「いまここにいること」を肯定し、人生のあいまいで複雑な豊かさについて粘り強く考え、丁寧に言葉をつみかさねていく。読めば読むほど世界の広がりが増していく、不思議な人生論、26編。


     1章 「生きにくさ」という幸福
     2章 老いることに抗わない
     3章 家に記憶はあるか?
     4章 想像力の危機

     いつか、この人の小説を読みたいと思っていた。が、最初がこの本になってしまった。初めての作家さんでこういう人生論という題名が付いているので難しいかと考えていたが、読んでいてすんなりと入っていけた。それは、共感する部分も数多くあったこともあるが、ものの見方にも感心させられるものがあったことだ。
     現代の状況を誰でもどういう風に見ているのか、作家は、人間より経済を優先する社会とかを嘆いている。その章ごとにテーマがあるが、そのひとつひとつが意味深い内容なのだ。

     希望や可能性という考え方は、「時間とともに進歩する」という信仰に乗っている。しかし私の小説の登場人物たちは(……)ただ、自分がここにいて、しゃべる相手もここにいる、それでじゅうぶんないかと思っている。
     「それでじゅうぶんないか」と思えるということは、いまここにいる自分と相手を肯定することだ。 ― 本書より
     (帯文より)

     小説については、
     小説というのは言葉に対する一種の″音感″が発達していればけっこう簡単に書けてしまう(少なくともそれくらいでなければ小説家としてつづけられない)。しかし自分の中にある雲みたいな霞みたいなものを小説という形式に入れるにはものすごく時間がかかる。それはもうその途上にいる本人にとっては、本当に到達点があるのかどうかわからない質の時間でありプロセスだ。だからつまり、<あやふやさ>や<よるべなさ>しかない。しかしそれから逃げることはできない。私はすでに十数年、小説家としてやってきたけれど、信じられるのは<あやふやさ>や<よるべなさ>しかないと思う。 (本文より)

    なぎさの媚薬〈2〉哲也の青春・圭の青春  重松 清

    • 2006.12.29 Friday
    • 22:14
    なぎさの媚薬〈2〉哲也の青春・圭の青春
    なぎさの媚薬〈2〉哲也の青春・圭の青春
    重松 清
     332 ★★★☆☆
     【なぎさの媚薬〈2〉哲也の青春・圭の青春】 重松 清 著  小学館

     《なぎさは、わたしを探してくれるだろうか》

     内容(「BOOK」データベースより)
    今度こそ、あなたを救い出してみせる。過去に戻れることができるなら。もう一度すべてをやりなおすことができるなら。ぼくは、あの夜のあなたを、抱きたい。不思議な娼婦・なぎさが男たちに見せる、一夜の夢―。待望のシリーズ第2巻。


    人間、男は過去に出来なかったことを引きずりながら生きている。夢でもいいから、もう一度その時代、その時間に戻ってやり直したい衝動に駆られるのだ。そのためには、娼婦・なぎさに会わなくては、渋谷のどこに行けば会えるのか。
     今回のは、前回と違った趣がある。帯に官能小説とあるが、官能部分が少なくなって、人間のしがらみみたいなのものが小説のストーリーになっている。青春に於ける苦悩が全面に出ているような気がする。

     圭の青春は、官能小説でもなくても良かったのではと思わせるほどの感じである。「家」という重みに亡くなった義姉さんへの想いが、…。過去に戻って知ったこととは、…。

     ねえさん、あなたがわが家に嫁いでくるときも、そうだったの―?
     不安で、心細くて、「家」にまつわるなにもかもが恐ろしくて……それでも、ぼくは信じている。ほんのわずかなものかもしれないけど、あなたの胸には希望だってあったんだ、と、ぼくはあなたを絶望から救い出したわけじゃなくて、あなたが見失いかけていた希望を思いださせてあげただけなんだ。あなたは、ぼくによって運命を変えられたんじゃなくて、自分自身の胸にあった希望を、もう一度その手でつかみ直し、自分の力で新しい運命を切りひらいていったんだと、ぼくはいま―そう信じて、祈っている。
    (本文より)

    王国〈その3〉ひみつの花園  よしもと ばなな

    • 2006.12.28 Thursday
    • 21:23
    王国〈その3〉ひみつの花園
    王国〈その3〉ひみつの花園
    よしもと ばなな
     331 ★★★★☆
     【王国〈その3〉ひみつの花園】 よしもと ばなな 著  新潮社

     《雫石は、高橋君の庭に負けたのだ》

     内容(「BOOK」データベースより)
    雫石の不倫相手、真一郎の協議離婚が成立した。新しい生活が始まろうとするその矢先、壁が立ち塞がる。それは、真一郎の亡き親友が残した美しい庭と、その庭を守り抜こうとする若く魅力的な義母の出現だった。真一郎の思いを見抜き悩む雫石。落ち込んだ自分を見つめ、自分が何に耐えられないのかを知ろうとする雫石の心の旅。


     私は、よしもとばななさんの本を読むと読書の原点に帰ってきたような気がする。人間のことが一杯自然に書いてある。そのどれもが読んでいて、本当にあっさりと胸に入ってくる。

     人間は未来を、自分自身の未来を見つめることが出来るのだろうか。人と人とが好きになって結婚して、やっぱり別れてしまう。こういうことは、一過程のなかでわかりきっているのだろうか。あーあ、あの時は若気の至りで前へ突き進んだだけで、今思うと、もっとじっくり考えれば良かった。親が反対するばかりに意地になって部分もあるし、等々。
    漠然と未来を感じてしまうことが出来ればよい人生がおくれるのかは又別の問題でしょうか。
     雫石は、真一郎と新生活しようとするが、そこに立ちはだかるものが…。

     まだ、その4、その5と続くらしい、《波》によしもとばななさんのインタビューが載っていた。

    ぼく見ちゃったんだ!―インクヴァンパイア〈1〉  角田 光代

    • 2006.12.27 Wednesday
    • 22:35
    ぼく見ちゃったんだ!―インクヴァンパイア〈1〉
    ぼく見ちゃったんだ!―インクヴァンパイア〈1〉
    マルタン マッジェ,エリック サンヴォワザン
    330 ★★★☆☆
     【ぼく見ちゃったんだ!―インクヴァンパイア〈1〉】 角田光代 訳 マルタン マッジェ 絵  エリック サンヴォワザン 文

     《インクヴァンパイアシリーズを角田さんが訳すと…》

     出版社/著者からの内容紹介より
    ぶきみかわいいベストセラー・ファンタジー
    夏休みははじまったばかり。ぼくは、いやいやながらとうさんの本屋の店番をしていた。そんなある日、紙みたいに真っ白な顔、ぼうぼうまゆ毛の不気味な客がやってきた。男はストローを取り出すと本にさしこみ、ちゅるちゅる吸いはじめた。おどろいて叫んだぼくに気づいて逃げたヤツのあとには、文字が消えて真っ白になった本が残されていた。あいつを探し出して、秘密をつきとめなきゃ。 ちゅるちゅる本が飲みたくなる!
    インク飲み男の謎を追う、「ぼく」のひと夏の冒険物語


    ぶきみかわいい話だ。
     男がストローを本にさしこみ、文字がなくなっている。
     文字のインクを飲み込んでいるのだ。
     この本は、シリーズになっているようだ。
     面白い絵本だ。

    あんたのバラード  島村 洋子

    • 2006.12.26 Tuesday
    • 23:27
    あんたのバラード
    あんたのバラード
    島村 洋子
     329 ★★★☆☆
     【あんたのバラード】 島村 洋子 著  光文社

     《音楽を聴いて読んだらどんな感じになるだろうか》

     内容(「BOOK」データベースより)
    「帰れない二人」「少しは私に愛を下さい」「アイ・ラヴ・ユー、OK」―懐かしいあの頃のラヴソングにのせて贈る、哀しくせつない八編の物語。


     「悲しい色やね」………………作詞:庚 珍化 作曲:林 哲司
     「アイ・ラブ・ユー,OK」……作詞:相沢行夫 作曲:矢沢永吉
     「星屑のステージ」……………作詞:売野雅勇 作曲:芹澤廣明
     「帰れない二人」………………作詞 作曲:井上陽水 忌野清志郎
     「少しは私に愛を下さい」……作詞 作曲:小椋 佳
     「大阪で生まれた女」…………作詞 作曲:BORO
     「いいわけ」……………………作詞 作曲:つんく
     「あんたのバラード」…………作詞 作曲:世良公則
       8編

     ラブソングの曲に合わせた作品、8偏の物語。
     大阪が舞台なので、やっぱり「悲しい色やね」、「大阪で生まれた女」なんかがいいです。
     でも、「アイ・ラブ・ユー,OK」が、何かココロに残ります。
     ナツキ・24歳・子供ひとり、その夏、サンダルと水着がどうしても欲しくなって、子供を夫の親に預けて、梅田の阪急百貨店に行こうと思って出掛ける。その日から、三年一度も帰らないのだ。そのナツキが正式に離婚したいと思って帰ってくるのだ、そこには、子供がなついている中学時代の友人・由紀子がいた。

     ♪ 求め合って生きていたい
     ♪ この世界のすべてが闇に消えても
     ♪ アイ・ラブ・ユー,OK
     ♪ 見つめ合えばただそれだけで解る
     ♪ 誓い合った言葉は アイ・ラブ・ユー


     見つめ合えばただそれだけで解る…。あの頃、ナツキが夫とになる弘造とよく聴いた曲だった。幸せにだったのに、なぜ。こんな切なく哀しい女性たちの物語ばかりです。
     
     余談ですが、島村さんの写真が載っていたが、美人っていうか可愛い感じの人だ。
     
     

    かもめ食堂  群 ようこ

    • 2006.12.25 Monday
    • 21:32
    かもめ食堂
    かもめ食堂
    群 ようこ
     328 ★★★☆☆
     【かもめ食堂】 群 ようこ 著  幻冬舎

     《何か、ほんわかしてていいなー》

     内容(「BOOK」データベースより)
    ヘルシンキの街角にある「かもめ食堂」。日本人女性のサチエが店主をつとめるその食堂の看板メニューは、彼女が心をこめて握る「おにぎり」。けれども、お客といえば、日本おたくの青年トンミただひとり。そんな「かもめ食堂」に、ミドリとマサコという訳あり気な日本人女性がやってきて…。


     裏表紙?に初めての映画のための書き下ろし作品と書いてある。映画のために書いた本のようだ。映画の方も初日から満員で大変な評判のようだ。私も荻上直子監督さんの映画を見たかったのだ。小林聡美さんのファンでもあるから、是非見てみたい。
     群さんの作品を読むのは、何年ぶりだろうか。群さんの作品に共感する女性の人たちが多いようである。エッセイなども身近なものを取り上げていて読んでいて面白すぎる。

     「サチエさんは、目的があるんじゃないですか。でも私は何もない」
     「目的がなくてもいいんじゃないですか。ただ、ぼーっとしていればいいんですよ」
     「その、ぼーっというのができないんですよね。自分ではぼーっとしているつもりでも、あれこれ考えてしまって、頭の中から鬱陶しいことが抜けていかないんです」
     「来たとたんは無理ですよ」
     「そうそう、フィンランドモードに切り替わってないですから。鬱陶しいことは忘れましょう。あまり深く考えないで、のんびり過ごせばいいんですよ。うちに来ていただくのは大歓迎ですから、いつでもいらしてください」
     (本文より)

     日本に疲れて、日本の生活に疲れて来たのが、フィンランド、ヘルシンキ、かもめ食堂、そこでおにぎりがメインのメニューがあったのだ。
     フィンランド、フィンランドって、どんなところだろうか。
     ムーミン、サンタクロースがいるところだ。

    使命と魂のリミット  東野 圭吾

    • 2006.12.24 Sunday
    • 20:33
    使命と魂のリミット
    使命と魂のリミット
    東野 圭吾
     327 ★★★☆☆
     【使命と魂のリミット】 東野 圭吾 著  新潮社

     《使命と魂のリミット、という題名のままの物語だ》

     内容(「MARC」データベースより)
    心臓外科医を目指す夕紀は、誰にも言えないある目的を胸に秘めていた。その目的を果たすべき日に、手術室を前代未聞の危機が襲う。あの日、手術室で何があったのか? 今日、何が起きるのか? 心の限界に挑む医学サスペンス。


     東野作品の最新作と言うので読んでみたが、だがサスペンスドラマだけのような感じだった。私は、東野作品をあまり読んでいないが、この本にもっと深みの要素があってよさそうな気がする。読者は、贅沢なのだ、もっと一ひねりも二ひねりもあってよいような感じだ。しかし、「週刊新潮」に連載されていたというのもを聞くと納得させられるのだが。

     物語は、よく練られている。
     父親が手術で亡くなったことにもやもやとしたものをもつ主人公・夕紀、父親の手術を担当した西園教授、恋人を失ったことの恨みを持つ穣治、それが病院という舞台に繋がっていく。

     父親が手術前日に娘・夕紀に言う。
     人間は生まれながらにして使命を与えられている―。(中略)
     「ぼんやり生きてちゃだめだぞ。一生懸命勉強して、他人のことを思いやって生きていれば、自ずといろいろなことがわかってくる。人間というのは、その人にしか果たせない使命というものを持っているものなんだ。誰もがそういうものを持って生まれてきてるんだ」(本文より)
     

    ありふれた魔法  盛田 隆二

    • 2006.12.23 Saturday
    • 20:15
    ありふれた魔法
    ありふれた魔法
    盛田 隆二
     326 ★★★★☆
     【ありふれた魔法】 盛田 隆二 著  光文社

     《ありふれた生活にも、ありふれた魔法がやってくるのか》

     内容(「BOOK」データベースより)
    秋野智之は、部下の森村茜が担当する顧客に謝罪するために彼女とともに先方を訪ねた。その帰りみち、智之は彼女に、頑張ったねと声をかけるだけでなく、そっと抱きしめてあげたくなった。自分がもっと若くて、きらきらと輝いていたあのころの自分だったら…。人生の予定が狂うほどの恋などするつもりはなかった。秋野智之44歳、城南銀行五反田支店次長、妻と3人の子あり。リアリズムの名手が、理性では抗えない人間・人生の不可思議を描く。


     私は、銀行の仕事がどんな内容のことをしているのか、詳しくは知らないのだが、銀行の支店というのは、大体こんなものだろう。銀行の支店のうまく描いている(現実的に)、顧客とのやりとりの描写もリアルである。今、話題のコンプライアンス、ミクシテイなども、この本に取り込まれている。
     問題先には必ずふたり一組で訪問し、部下は先方の言葉を必死にメモする。貸すと言った、言わないで民事裁判に巻きこまれたときの証拠になるからだ。 (本文より)
     これは、企業にいると営業の基本なようだ。必ずふたり一組ということなのが当たり前のように書かれている。テレビドラマで見る警察の捜査で警察官が二人一組もこれに近いものがあるのだろうか。

     主人公・秋野智之44歳は、仕事が良くできる城南銀行五反田支店次長で家庭も3人の子供もあり、子供にもいろいろの問題があるが、ごく普通のサラリーマン家庭の夫だ。部下の森村茜は、ひと回りしたの仕事が出来る女性だ。「人生の予定が狂うほどの恋などするつもりはなかった。」 (帯分より)ここにもっていくくだりがまったくうまいのである。男性の感情の揺れぐわいがわかるのである。銀行の支店次長と言え、小遣いは4万円、慶事、弔事などでなくなってしまう、そこで競馬のビギナーズラックを取っている。これは、おとぎ話だろうか、いや光り輝いて仕事にしていない男性にとってはそうかもしれないが、一生懸命に働いている男性には、ごく普通の話なのかも知れないのだ。たった一つのことで会社を追われるのだが、家族との修復などもよく描かれている。と、言うことは仕事で愚痴ばかり言っている私には、こういう恋など決しておきないのだろうか。
     それにしても、うまいと率直に思うのだ、この本は。

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