夜のピクニック
恩田 陸
★★★★★☆
【夜のピクニック】 恩田陸 著 新潮社 第2回本屋大賞受賞作
恩田さんの作品が少し分かりかけてきたので、ここは一気呵成に、この本を読んでみることにした。作家ガイドによると、恩田さんの作品は、この本から読みなさい、となっているのである。作家ガイドには、親切丁寧に読み順まで書いてある。
高校生活にある歩行祭を描いている。どこかで見た記憶があると思ったら、NHKのアーカイブで再放送(日曜日)していたのを見たら、岩手県立福岡高校の応援団が80kmを歩くというドキュメントだった。この本は、全校生徒なのでスケールが違うようだ。
歩くという単純なことだが、時間を負うごとに体のあちこちに異常をきたしていく。でも歩ききった先にあるものは、やり遂げた達成感だけでなく、体だけでなく精神的な充実感である。何年前のスリーデーマーチというイベントで30kmを歩いたことがある。3日間歩くのだが、1日だけで終わったのが悔しかったのを覚えている。
1度やってみたいことは、山手線一周を歩くことである。一時期、山手線の脇に住んでいたことがあり、深夜とか明け方に外がうるさいので窓越しに覗いたら、15人くらいの人たちがリュックを背負って歩いているのだ。山手線の外側の道路を歩くということは、ウォカーにとっては魅力的なコースなのである。
恩田さんは、歩行祭と異母兄弟の話とどっちが先に考えたのか、と妙なところに疑問がわいたのだが、こんなことはどうでもよい。この物語は、爽やかで輝ける青春時代の演出である。読者も高校生と一緒に歩いている感覚になっていくのであるのだ。途中、休憩するころには、お茶を飲んでおにぎりを食べたくなる。
私もこの本を読んでゴールに着いたとき、恩田作品の何かを掴んだだろうか、いやまだだな、ようやく出発点に着きホンモノの恩田作品に向かうのだ。