恋文
阿久 悠
【恋文 LOVE LETTER】 阿久 悠 著
阿久 悠さんはピンクレディー、沢田研二等などの歌う作詞家として、超有名な人である。
あのごつい顔で、とてつもないいい歌詞ができるものだと感心させられる。
「恋文」をめぐる24の物語である。一般的な普通の若い男女の恋文は少ない。天国の夫に宛てたものや、嫁ぎ行く娘から一人で育ててくれた父親に宛てたもの、などなどである。
本のあとがきに
『恋文は、自分の思いのたけを伝えるわけですから、本音の伝達ということになります。・・・・・・(中略) 人間は、生きていること自体、どこか切ないものです。真面目に、懸命に、美しく生きようとすればするほど、その切なさはふくらみます。そして、自分自身で抱き抱えていることの限界を感じた時、恋文を書くのです。それはどこか祈りに近いもので、どのようにあからさまに思いを伝えても、下品にはなり得ないものだと思います。 』
僕は恋文を書いたことも、もらったこともないので、その感慨はないが、そのわくわくした気持ちは十分わかるような気がします。一,二度は、もらったような気がするが恋文というものでなく、どこかへ一緒に遊びに行きませんか、というそんなものだった。それでも、胸キュンになったのを憶えている。
自分が恋文を書くならば、どんな思いを相手に伝えるだろうか。
《 あなたへ
時はいじわるだと、つくづく思う。
なぜもっと早くあなたと、会わなかったということです。
二人で感じた風は、空気は、僕は忘れはしない。
二人で歩いた街は、都市は、僕は忘れはしない
あなたが、ちょっと気に入った男が
百回、愛していると言ったら
僕は、千回は言うだろう
あなたが、ちょっと気に入った男が
千回、メールしてきたら
僕は、八千回はするだろう
僕にとっては誰がなんと言おうと、あなたは僕にとって女神なのです。
女神はほんのすこし、微笑んでくれるだけでいいんです
単純でしょうが、ファイトが湧いてくるのです。………… 》
恋文は、思いのたけを伝えることは単純だが、難しい。
前出のような恋文を出しても、ポイと屑篭に捨てられてしまわれそうだ