南極のペンギン
高倉 健, 唐仁原 教久
【南極のペンギン】 高倉健 著
高倉 健さんは、優しさにあふれている人だと思う。
ある人から、ウソでもMonngaさんは高倉健さんの横顔が似ていると言われると、ほんのちょっと健さんを意識してしまうことがある。映画は任侠物の時代しか見ていないが、直に見る機会があるだろう。そういう訳で今回はこんな本を読んで見た。
【南極のペンギン】 高倉 健 著を読んで見た。
10篇からなるエッセイであり、大人の絵本のような本である。
唐仁原 教久さんのイラストがまた楽しく、懐かしい。
イラストがふんだんにページに盛り込んであり、画が美しく、健さんの文章にマッチしている。
『 北極のインド人
――― ぼくはなんとなく不安だった。
どうして、南国生まれのインド人が、わざわざこんな寒い北極に住んでいるのだろう。ふしぎに思って、その理由をたずねた。
ベーゼルさんという名前だった。十八歳のとき西ドイツの大学に行き、電気技師になってカナダに就職した。その仕事の関係で北極にも行かされた。なんとか北極をたずねるうち、雪と氷のこの世界が大好きになった。
「ここに住むと、人間を信じることができる」
ベーゼルさんはそう思った。
北極の自然はきびしい。みんなが力をあわせないと生きていけない。この土地には警察もないし、家にカギをかける習慣もない。テレビも電子レンジもないが、たいていみんな無線は持っている。どんなにいそがしくても夜中でも、無線が鳴ると飛んででる。命にかかわる連絡が多いためだ。おたがいを信じあい、助けあいながら暮らしている。
そんな生き方にひかれて、ベーゼルさんはカナダ人の奥さんとふたり北極に移り住んだ。そして、探検家を泊める小屋をつくり、北極を案内する仕事をはじめた。―――』(本文より)