かなしい恋愛
ねじめ 正一
【かなしい恋愛】 ねじめ正一 著
《商店街にも恋愛はあるのだ》
高円寺の商店街が物語の舞台である。
女店員さんたちの話しである。ここでは女店員さん=愛人と図式で物語が進んでいく。
【かなしい恋愛】となっているが、かなしい恋愛の一面もあるが、僕には陽気で図太く、たくましい愛人さんたちであるように感じた。
『 睦子がかさねたいのは言葉だった。なぜ、なぜ、なぜと辰夫に問いかけたかった。なぜ電話をくれなかったの・・・・・なぜカラダが先なの・・・・・なぜもっといっしょにいられないの・・・・・。
しかし睦子は言えなかった。唇をふさがれていたせいではない。言えばまた、辰夫が不機嫌になるからだ。
―――オレがどんなに無理して睦子のところにきてるのか、知ってるのか。
―――愛してるって言葉を聞けば安心するのか。
―――言われなければ、愛してるってことがわからないのか。
そんなふうに言い返されると、睦子は何も言うことができない。 』
この本では、商店街の様子がわかる、例えば洋装店では
『 午前中の客は急ぎが多い。じっくり品物を選ぶのでなく、葬式用の黒ネクタイとか、結婚式の白ネクタイとか、靴下とか、ワイシャツとか、とにかくすぐに身につけていく物を大急ぎで買って行く。
「はい。こちら二千円になりますね」
いちばん安い黒ネクタイを買ってその場で締め、そそくさと出て行く客を「ありがとうございました」と見送ると、ユカ子と睦子はまた話の続きを始めた。 』(本文より)
僕がよく行く阿佐ヶ谷商店街にねじめさん(元々実家)がやられている民芸店がある。
吉祥寺駅のロンロンのなかにもねじめ民芸店がある。この辺には何点かあるのだろう。
商店街に生まれ、住んで、なので現実感があり、小説も商店街の雰囲気が十分に伝わり、面白く読めた。
商店街を歩くのは楽しい。この前は、歩いていたら、今話題の讃岐うどん屋が開店セールをやっていたので寄って食べてきた。かけうどんの小が100円だが、中だと200円で大だと300円になっていた。ぶっかけ、かまあげ、種類はいっぱいあったが値段は駅前にある立ち食いの店と同じだと思った。具になる天ぷらの種類は豊富にある。かきあげ、ちくわ、コロッケ数種類等など。味はほどほどで美味かった。