少女達がいた街
柴田 よしき
【少女達がいた街】 柴田よしき 著
物語は、1975年の渋谷の街にいる女子高校生である。ロックに明け暮れる時代であり、それに合うファッション、たむろできる喫茶店がある。そんな日々が綴ってある。
1996年からは、事件の謎ときの話になってくる。一人の刑事が1975年に起きた事件を解き明かしていく物語になっていく。
1975年は、少女たちの恋愛物語、1996年はミステリーな話、その二つがマッチしていく。
よく作ってあるなと感じてしまう。
謎解きが一重、二重、三重になっていて、意外な結果になっていくのである。
『 ノンノは部屋のドアのそばに置いたままだったHOSONOの紙袋を引き寄せ、中から箱を取り出して開けた。緑色の、ロンドンブーツ。
今は、退学なんかなりたくない。ノンノは、そのブーツを履いてディーブ・パープルのコンサートに出掛ける夜の自分を想像した。あの人はきっと、十五センチも背が高くなったあたしを見て目を丸くするだろう。それだけじゃない、あたしはきっとその夜、赤い口紅を塗って紫色のアイラインをひいているはずだ。
あの人を、うんと驚かしたい。学校にいる時のあたしとはまるで違うあたしを見せたい、あの人に、あたしがそんなに子供じゃないだってわからせたい。 』(本文より)
こんな感じで前半の物語が進んでいく。
『 この世には、二種類の女がいる。母になれる女と、なれない女。
そしてさらに、別の二種類にも分けられる。胎内に宿った生命を殺すことの出来る女と、出来ない女。
だがどちらがいいわけでも悪いわけでもない。どちらが正しくてどちらが正しくないというわけでもないのだ。それは単なる、事実に過ぎない。
しかし、母になれない女であってなおかつ胎内に宿った生命を殺すことの出来ない女は、決して妊娠してはならない。それだけは確かだ。 』(本文より)
後半の部分の重要な紐解きになる文章である。