花狂い
広谷 鏡子
07−3 ★★★☆☆
【花狂い】 広谷 鏡子 著 角川書店
《人間って、いくつになっても性があるんだ》
内容(「BOOK」データベースより)
「奥さんに男ができたんだ」―六十六歳の大学教授・治夫は、元教え子の愛人にそう断言され、最近きれいになり、性に対して積極的になってきた妻に、疑いと嫉妬を燃やし始める。一方、五十九歳の妻は、四十年ぶりに同級生の男性と出会い、恋におちる。夫婦は十年ぶりにセックスに挑むのだが…。初老の男女の性と生を、リアルに切実に描き、各紙誌で大絶賛された恋愛長篇、待望の文庫化。
初老の男女のリアルな性を描きながら、
作者の眼は、その性の向こうにあるものをひたと見据えている。
その透徹な視線があぶり出すのは、
むき出しの「人間の本質」であり、男女の「すれ違い」である。
吉田 伸子氏(書評家)絶賛。 (帯文より)
男と女も、いくつになっても元気だなーと率直な感想である。これは、WEB本の雑誌、目黒考二さんの書評にも書いてあったような気がする。
66歳の夫、59歳の妻、その妻の同級生の性が語られている。66歳の夫・大学教授には、昔の教え子の不倫相手がいる。59歳の妻が何十年ぶりかに同級生・堀田と同窓会で会う。59歳の妻が、本当に性に目覚めてしまうのか、…。
昔、手も握ったこともない同級生・堀田がふみ子に言う。
「満たされない。あなたが同窓会に来るかもしれないと聞いたときの、僕の嬉しさをわかりますか。それであなたがご主人に愛されていないと知った悔しさも。
だから僕は決心したんだ。あなたを幸せにする。長年、人を使って会社をやってきた。修羅場もくぐった。会社の舵取りを一人でやらなきゃならんものは、ときにひどく利己的だよ。あなたのご主人のことなんてどうでもいい。あなたが幸せになればいい。それは僕が幸せになることだから」
中略
「本当に満足なセックスをしたことはある?」
中略
「思い出してみて。これまでにあるかどうか」
中略
「ぼくはあなたに幸せになってほしいだけ。あなたに瑞々しい人生を生きてほしいだけなんだ。実はね、ふみ子さん、今日僕があなたをここに呼んだのは、意思表明だたんだ」
中略
「いしひょうめい?」
「そう。わたくし、堀田隆志は、田之倉ふみ子を幸せにすることを、今日ここに誓います。いい?何があなたを幸せにすると思う?」
中略
「セックス、ですよ」
中略
「いまだって僕は、月に二回はしているよ。満足のいくセックスですよ。じゃあなぜ、あなたを抱きたいのかって?わかってください。何度でも言う。あなたに幸せになってほしいからだ。誰よりもあなたを愛した男として、あなたが不幸でいるのは堪えられない」
中略
「そんなこと……」
中略
「どうして?ご主人とセックスしなさいという男は怖い?」
中略
「僕としましょう、とは言っていない。あなたは奥さんなんだし、罪悪感があるのは当然ですよ。幸せになってください、と言ったでしょう。セックスがどんなに男と女を幸せにするか、あなたは知らないでいるんだ。偉そうに言うと、たぶんご主人もね」 (本文より)
これがまだ続くのだが、もっとリアルな表現だから、ここまでとする。
ただただ、女性作家が初老の性をここまで描いているのが凄いと思ってしまったのだ。
>女性作家が初老の性をここまで描いているのが凄い
すごいですね・・・。
でも、思ってたより伽感的な雰囲気もあって、
意外に淡々と読めたような気もしますね。
最近上梓された
『胸いっぱいの愛を』って作品を読んでみました。
ご自身の思い出を上手く織り交ぜてあるんですね〜。
広谷さんを徹底解剖した記事を載せてる
http://www.birthday-energy.co.jp
の解説を見つけました。
不安定ながら自己確立できた時期。その感謝の作品、とのこと。
従来の作品とは方向性が異なるんで、その辺が楽しめました。