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    春のオルガン  湯本 香樹実

    • 2006.08.28 Monday
    • 22:46
    春のオルガン
    春のオルガン
    湯本 香樹実
     203 ★★★☆☆
     【春のオルガン】 湯本 香樹実 著  徳間書店

     《12歳のトモミと9歳のテツの不思議な季節の物語》

     内容(「BOOK」データベースより)
    きのう小学校を卒業した。今日から春休み。でもなんだか私の頭はもやもや。隣の家との争いが原因で、家のなかもぎくしゃく。ひょろひょろ頼りないやつだけど、私の仲間は弟のテツだけだ。私たちはいっしょに家の外を歩きはじめた。小さな沼。広い空の下の川原。ガラクタ置場でのら猫にえさをやる不思議なおばさん。そしてある日、私たちはもう家に帰らないで、捨てられた古いバスのなかで暮らそう、と決めた…。十二歳の気持ちと感覚をあざやかにていねいに描き出した、心に残る物語。小学校中・高学年から。


     本当に12歳の少女の気持ちを丁寧に描いている作品だ。
     家庭、家族、隣との争いのことなどで少女の頭の中は……。
     のら猫を世話するおばさんを引き合いに出して、世間・正義を見詰め直すきっかけにしている。良い本だ。

     やわらかく風が吹いて、今日は草のにおいが強い。このにおい。胸を苦しくさせる、春のにおい。同じにおいがするのに、去年と今年では何もかも変わってしまったような気がする。おばあちゃんのこと、おとうさんのこと、おかあさんのこと、勉強のできるいい子だったはずの私のこと。同じにおいがするから、去年と今年が、あんまりちがいすぎるみたいな気がする。来年、同じにおいのなかで、どんなふうに感じるんだろう……。私はひやりとした。おじいちゃんは、あと何度このにおいをかぐんだろうか、そんなことを考えてしまったのだ。おじいちゃんだっていつかは死ぬ。だけど、あと何度なんてそんなこと、前はぜったい考えなかったのに。(本文より)

     

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