追憶のかけら
貫井 徳郎
127 ★★★★☆
【追憶のかけら】 貫井徳郎 著 実業之日本社
○【神のふたつの貎】 文藝春秋
△【光と影の誘惑】 集英社
△【さよならの代わりに】 幻冬舎太>
貫井作品は、4作品目である。
さすがに478ページもあると読み応えがある。ミステリーなのかなー。先先を読まないではいられないが、今回は自重して深夜遅くまで読まなかった。読みたいのがやまやまなのだが、それほどに読みたくなる作品であるのだ。
妻を交通事故で亡くした主人公・大学講師に50年前に亡くなった作家の手記が手にはいるのだが……。
映画でよく使われている、過去・50年前と現在と、そして二つが融合して進んでいく物語である。主人公を陥れる動機が、こんなこともあるのかと思わせるが動機とは確たるものもなくてもよいのでは、という気もする作品なのだ。
こんな話がある。映画帰りの若い二人の女性が殺された。犯人が見つかったのだが、動機が変わっていた。殺した動機というのは映画のシーンに出てきた母親が犯人の母親とダブって見えたのだ。それを後で見ていた二人の女性が笑い転げているのだ。一生懸命に働いている姿が映っている。ただユーモア・風刺的なつくりであったのだが、やはり犯人としては、許せなかったのだ。
この作品は、いくつかの教訓も含んでいる。
その一つが善意でしたことが、いつしかあらぬ方向に進んでいき自ら命を断つことになる。
良かれと思いやったことが悪い方向に向かうこともある得るのである。
この本を、どうやって構成を考えたのだろうか。
最後にある「手紙」を読者の読んでもらうために、逆算して物語を考えたのだろうか。
最後の「手紙」は、いままでのもやもやが吹き飛んで、一気に胸にジーンとくるものがあるのだ。