せつない時間
藤堂 志津子
【せつない時間】 藤堂志津子 著
《グレーゾーン》
人間の心は、白と黒と区別できないグレーから出来ているのか。
10篇からなる恋愛短編から出来ている。
「哀しさはけなげに愛を貫く女性だからこそひとしお深い。胸に刺さった小さな棘は忘れようとしても忘れきれない心の傷を疼かせる。どうすればこの一瞬を確かめられるのですか。平凡に生きるからこそ失くしてはいけない愛がある。息がつけぬほど想いがつのる10の恋愛短編。涙と共に時間を止めてしまいたい。」 (本文より)
[グレーの選択]
「高校の同期会で再会して愛し合うようになったももの、二人の愛が男の狂気を引きずり出してしまう、恋愛や結婚に揺れる20代、30代の女たちのせつない心情が綴りだされていく。」
「・・・・・・・
あなたを本当に愛しているのなら、どの方法を取るのがいちばんなのだろう。
できるるなら、私は別れたくありませんでした。
でも、私は三十四歳です。二十歳の女性のように自分の気持に忠実につっ走るには、さまざまな人間模様や人生の断片をかいま見てきました。
あなたは私と同じ年ですけれど、あなたは私よりもっとそのへんのところは、おわかりだと思います。
人生は白と黒にきっぱりと区分けはできない、グレーの濃淡のようなものだ、と。
このことを頭で理解していても、しかし皮肉ですね。私たちは、こと自分たちの関係においては、いつのまにか白か黒かの選択を自分自身に迫っていたのですから。
ひとは恋愛をすると実際の年齢を忘れ、たちまちに中学生か高校生にまいもどってしまうのでしょうか・・・・・・・・・。」
「人間は相矛盾するものを持っていて、一人の中に聖女の面も悪女の面も含まれているはずなんですね。」
(本文より)