素敵
大道 珠貴
227 ★★★☆☆
【素敵】 大道珠貴 著 光文社
方言は、時として愉快になったりもするが、大変な意味合いに勘違いを受けることもしばしばある。その一つが、熊本弁で『なおす・なおし』と言う言葉である。
『その書類をなおして帰ってくれ』
*書類のどこかを手直して帰れと、一般的に考える。
熊本弁では、『なおす・なおし』は、仕舞うことを言っているのだ。
一般的に言うと、こうなる…。
『その書類を俺の机の中に仕舞って帰ってくれ』
熊本では、ツキアゲのことを『てんぷら』と言う。
東京に来て、立ち食い蕎麦屋でてんぷら蕎麦を頼むと、蕎麦の上に小エビと野菜のかき揚が乗ったものが出てきて、ツキアゲでないのに驚く、頭のなかはてんぷら=ツキアゲのイメージに出来上がっているからである。でも、何回か経験すると蕎麦屋では、てんぷら=かき揚になってくる。
では、普通の天麩羅のことを何んと言うかと言うと、これも『てんぷら』と言うのであるから、おかしなものである。
天麩羅が出て序でに、熊本では刺身につける醤油は、甘くまったりしている。見た目にもどろっとした感じだ。関東では、薄口で辛く、さらっとしているのが多い。千葉の居酒屋で熊本風な醤油が出てきたのには驚いた。一緒にいた同僚は気持ちが悪いと言って醤油を関東風なものに変えていたが、私は懐かしくて、それにつけて食べていた。
この本は、短編・5編で、その会話の部分が福岡弁・博多弁でなっている。
九州出身の私には、この会話はほとんどわかるが、ほかの地方の人たちが読んでわかるのだろうか。会話のニュアンスの意味合いを理解するのが難しいのではないかと思ったりする。
夫婦、恋人、親子、友人―の愛情を微妙で不思議な関係を描いている。