きみは誤解している
佐藤 正午
229 ★★★☆☆
【きみは誤解している】 佐藤 正午 著 岩波書店
《佐藤正午さんは、本当に競輪を愛しているようだ》
出版社/著者からの内容紹介
「自分のことを僕って呼ぶ人間がギャンブラーになんかなれるわけないって,あたしは言ったのよ」-勤勉なJRの駅員だった青年は,死に臨みつつある父の人生に何を見たのか.残された当たり車券は,彼の何を変えてしまったのか.競輪場を舞台に繰り広げられる切ない人生の一瞬を,透明感あふれる文体で綴った珠玉の青春小説.
「きみは誤解している」「遠くへ」「この退屈な人生」「女房はくれてやる」
「うんと言ってくれ」「人間の屑」 6篇
この短篇集は、すべてギャンブル・競輪をかかわっている人たちの物語だ。
人生において、ギャンブルに手を染めなくてもいいならばそれにこしたことはない。ギャンブルをしない人生は、つまらないと言う人もいる、なぜなら人生そのものがギャンブルだからである。結婚なんて、その一例などと言う。
私も後楽園の場外馬券売場に週末通ったことがある。ここには、いろんな人たちがいる。馬券の買い方でも、1レース100円しか買わない人から、何百万も買う人がいる。また、馬券は買わずレースを見るだけの人や、屋台で『おまえらバカじゃないの、100円買って、75円しか返ってこないのに』と大声で叫ぶからかい屋など多種多様な人がいる。今、まったく馬券を買うことはなくなった。最後に買い方を開眼したのだ。1番、2番、3番人気から流して買うのだ。配当が少ない方は、ちょっと買い、配当が高い方を多く買うのだ。これで買っていたら儲かったのだ。統計上から買っているだけであるから、あまり推理しなくなった。1,2,3番人気を軸にするだけだからである。人間とは、贅沢である、これだと競馬そのものが面白くなくなったのだ。
この本は、あまり損をしたことが書いていないような気がする。人生の節目の物語が多いせいか儲かったことが多く書いているようだ。私は競輪はやったことがないが、ファンやギャンブラーは選手と一緒に全国を廻っている人たちも結構多いと聞く。そんな話などもこの本のなかに出てくる。
結局、この本も恋愛相手、家族、同僚と競輪とのかかわりの物語だが総じて切ない話が多い。