ボディ・レンタル
佐藤 亜有子
【ボディ・レンタル】 佐藤亜有子 著
出だしの部分は
『 暗いテーブルの下で、トイレの前で、エレベーターの片隅で、わたしは男に一枚のカードを渡す。
―――――――ボディ・レンタル?
白くて、無機的で、何の光沢も持たないカード。そこに記されているのはボディ・レンタルの文字と、ハイフンでつながれた数字の羅列。ある男には、それは何の意味も持たない。ある男には、それが謎になり、妄想になり、悪魔を解き放つ鍵になる。
無機的なカードの意味を知る男の目には、目の前に立つわたしがひとりの女に、ひとつのやわらかい物質に見えてくる。たとえば、ある種の目的に作られた人形のように。
彼らは部分を組み替え、切り離し、こね上げて、自分の目的にかなった玩具を作る。唇だけでもいい。細い指先でも、足の裏のくぼみでも、性器だけでもいい。わたしはその材料を提供する、ひとつの無形の物質である。そのメッセージを受け取った男の視線だけが、わたしの唇から首筋へ、胸元へ下りていく。
――――――何のことだか、知りたい?
男の視線が粘りけを帯びる。腰の線から、ぴったりしたミニスカートの下の、陰の部分へ。わたしは片方の腿をゆっくり持ち上げる。
――――――だったら、この番号にかけてみて。たっぷり教えてあげる。
そして男の腿の付け根、微妙な部分に手をかけて、そっと握り締める。これでレンタル契約は七割がた成立だ。
わたしのからだは誰のものでない。だったら、誰に貸し与えたっていいわけだ。 』
(本文より)
普通の女子大生?の日常とボディ・レンタルの部分との物語で日常とボディ・レンタルの対比の物語でもある。ボディ・レンタルは売春行為とはちょっとちがった意味あいで語られているようだ。ボディ・レンタルは愛情をもったら成立しないと書かれている。あくまでもボディ・レンタルなのである。
お客は社長より会長といった人が相手として登場してくる。行為の数々が記されていて、こんなのを20代の女性が書ける描写かなと感心させられる。
行為の一つに会長職の70歳すぎの要求は若い女性を枕にして寝ることであるが、体が硬くても、柔らかすぎてもよくない、程よいやわらかさであることだ。他にも一杯に遊び方が出ているので興味のある方は【ボディ・レンタル】を読んでみて下さい。