命の終わりを決めるとき
朔 立木
45 ★★★☆☆
【命の終わりを決めるとき】 朔立木 著 光文社
《人生、死んでからも大変なんだ》
「終の信託」
「よっくんの今」 2編
『命の終わりを決めるとき』の題名の通り命の終わり方をテーマにした本である。
「終の信託」
女医・折井綾乃と患者・江木泰三との命の終わり方は、安楽死というものだが、……。3年後に検察庁から呼ばれるのだ。安楽死を家族が同意してくれていたのに……。検察官・塚原は、この事件を担当して手柄にしようとするのだ。医者は患者のためにとの思いにおこなったことが思いもよらぬことに進んでいく。病院というところの不思議、検察庁というところの不思議。読み終わって、女医・折井綾乃の哀れさだけが心に引っかかった作品である。
「よっくんの今」
北村万里は、どうも素直になれない。家族にも、学校にも、友だちにも。やっと見つけた居場所はよっくんだったのに。よっくんの寝顔を見て殺してしまうのだ。万里の心理状況は……。権力欲丸出しの取調べ刑事と万理とのやり取りと回想が痛々しい。