蛇にピアス
金原 ひとみ
【蛇にピアス】 金原ひとみ 著 集英社
《耳に大きなワッカ、重くないの?》
第130回芥川賞受賞作の作品である。
「スプリットタンって知ってる?」
「何?それ。分かれた舌って事?」
「そうそう。蛇とかトカゲみたいな舌。人間も、ああいう舌
になれるんだよ」
男はおもむろにくわえていたタバコを手に取り、べろっと
舌を出した。彼の舌は本当に蛇の舌のように、先が二つに
割れていた。私がその舌に見とれていると、彼は右の
舌だけ器用に持ち上げて、二股の舌の間にタバコを
はさんだ。
「……すごい」
これが私とスプリットタンの出会い。
「君も、身体改造してみない?」
男の言葉に、私は無意識のうちに首を縦に振っていた。
《本文 出だしより》
最初、太さ1.5ミリ程度あけて、それをすこしずつ拡張して
いき、最後に残った先端部分をデンタルフロスや釣り糸
などで縛り、最後にそこをメスやカミソリで切り離すと
スプリットタンが完成するとある。
これを読んでもただただ痛いしか言葉が見当たらない。
人間は何故、自分を傷つけるのか。
民族によっては、こんなことを当り前のようにしている国も
あるが、日本が平和すぎるのだろうか。
爆笑問題が司会する深夜番組で作家の森村誠一さんが
人間には、食欲、性欲、表現欲があると言っていた。ここでは
書くことを取り上げていたが、表現欲にはファッションなども
含まれる。ピアスを耳、舌、臍などなどしているのをテレビで
見たことがあるが体に異常をきたさないのだろうか。
この若い女性は、ただかっこいいだけでなく生きている証が
欲しかっただけなのか?