雪の夜話
浅倉 卓弥
220 ★★★★☆
【雪の夜話】 浅倉卓弥 著 中央公論新社
私は、どうも幽霊ものが苦手なのだが、現実感とのバランスがほど良く感じた。雪のある生活をしたことがないが雪のもたらす光は、美しい彩に違いないことだろう。
「僕は子供時代を失い、中学生や高校生だった時代を失い、仕事を失い東京での生活を失い、山根さんを失い、水原さんの好意を失い、かくちゃんを失い、とにかくさまざまなものを自分の後ろに置き去りにして来た。」 (本文より)
主人公が高校生時代に家の近くの公園で雪ん子・雪子に会い、東京の大学を出て、東京で仕事をし、人間関係で東京から実家に帰って来て、また雪ん子・雪子に会う話だ。
誰かが言っていた、ファンタジー哲学か、上手い表現だな。
生きる、死、命などのことがやんわりと語られている。生きている人より、圧倒的に亡くなった人が多いのだから、やっぱり生きている人間は、亡くなっている人間に何かをもらっているのだろうか。主人公が雪ん子・雪子に会って前向きな人生を歩む姿が読者にはうれしくなるのだ。