満月の夜、モビイ・ディックが
片山 恭一
【満月の夜、モビィ・デイックが】 片山恭一 著 小学館
《モーツァルトとバス釣り好きな人は必読かも?》
俗に【セカチュウ】でヒットした片山さんの作品を読んでみた。
この作品は、村上春樹さんの【ノルウェイの森】に似ている
そうだが、十何年前に読んだのでどうかなと言う程度である。
片山さんの世界があるので、これはこれでよいのではと思ったが
どうだろうか。
この作品の出だしが男からの視線というか、語り口を感じた。
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両親の関係が崩壊していく過程は、一つの教訓をぼくに
もたらした。結婚は偶然の産物に過ぎない。何かの原因で、
どちらか(あるいは双方)が自分たちの結婚生活に情熱を
失えば、夫婦など素粒子みたいに簡単に崩壊してしまう。
どんなに運命的に見える出会いも、一緒になってから冷静
に振り返ると、若気の至りか勘違いであったことに気づく。
そして「おれは(わたしは)たまたまそこにいた相手を、
たまたまそこにいたというというだけの理由で、生涯の
伴侶にしてしまったのでないだろうか(しら)」という、
パスカル的な崩壊にとらわれる。
世の中の夫婦が子どもをつくるのは、一緒に暮らして
いる相手が、じつは生涯の伴侶でもなんでもなく、偶然
という運と不運によって、たまたま契りを結ぶに至った、
きわめて蓋然的な存在である、ということにみんな薄々
気がついているからではないだろうか。
中略
どうしてぼくたちは、はずみや勢いで選んでしまった相手と
ステディな配偶関係を結び、あたりはずれにかかわらず、
生涯の大半を共に暮らすなどという不合理を延々とつづけて、
いるのだろうか。
(本文より)
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