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- 2013.07.17 Wednesday
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与謝野晶子、高村光太郎、山之口貘、金子光晴の四人が取り上げられている。山之口貘の項に惹きつけられる。一度、読んだような気がするが、こういう詩人もいたんだと改めて思う。ボヘミアン詩人、いわく貧乏詩人の貘さん、いわく借金屋貘さん、便所の汲み取り人だった貘さん。それでも「精神の貴族」と呼ばれているのです。佐藤春夫、金子光晴にときには援助してもらいながらの生活。そのエピソードが愉快だ。元気なころに「告別式」というものも書いている。彼の詩は簡単に出来ているのかと思ったら、推敲しながら書いているという。ある日、文学散歩で娘さんと三鷹の禅林寺に行ったとき、『鴎外は森林太郎之墓と本名で刻まれてるからいいけれど、太宰治はかわいそうだね。ペンネームで刻まれちゃったりして。』(森鴎外と太宰治の墓は向かい合って立っている。)このことを娘さんが覚えていて、山之口でなく山口家の墓と本名で書かれているようだ。この本は今年初めて★4つです。他の3人のもいいです。
『妹へおくる手紙 』 山之口貘
なんという妹なんだろう
― 兄さんはきっと成功なさると信じています。 とか
― 兄さんはいま東京のどこにいるのでしょう。 とか
人づてによこしたその音信のなかに
妹の眼をかんじながら
僕もまた、六、七年ぶりに手紙を書こうとはするのです
この兄さんは
成功しようかどうしょうか結婚でもしたいと思うのです
そんなことは書けないのです
東京にいて兄さんは犬のようにものほしげな顔しています
そんなことも書かないのです
兄さんは、住所不定なのです
とはますます書けないのです
如実敵な一切を書けなくなって
といつめられているかのように身動きも出来なくなってしまい、満身の力をこめて
やっとの思いで書いたのです。
ミンナゲンキカ
と、書いたのです。
この詩を読んで、茨木のり子さんは『なんだかおかしくなって、くりかえし読むと哀しくなってきて、人間そのもへのいとしさがふつふつとわいてきて、忘れがたい詩だ』、と書いています。