タペストリーホワイト
大崎 善生
269 ★★★☆☆
【タペストリーホワイト】 大崎 善生 著 文藝春秋
《あの時代の学生運動とは、何だったのか、そこに生きた人たちは今、》
内容(「BOOK」データベースより)
「明日もあなたは私を愛してくれているのでしょうか?」盗み見た姉の手紙に記された一文―宛名の男を求めて、妹は混沌へと足を踏み入れた。愛する者たちを奪い去っていった狂熱の季節を彩るキャロル・キングの調べ。脆く、澄み切った時間を描いた青春小説。
内容(「MARC」データベースより)
学園闘争が残したのは、ひび割れて飛び飛びになった床のタイル-。愛する姉・希枝子を内ゲバで失った洋子は、姉の恋文の相手を求めて混沌へと足を踏み入れた…。脆く、澄み切った時間を描いた青春小説。
久しぶりの大崎さんの本を読んだ。
相変わらずの透明感のある文章だが、内容は、強烈な物語だった。
学生運動が激しかった時代・70年代初めの頃か、ちょうどその頃大崎さんも学生だったのか。
妹・洋子は、聡明で優等生な姉・希枝子が誇りだった。ある日、姉が何かに目覚め変わっていった。「今ローデシアで何が起きているかに関心を持っていなければならない。もちろんビアフラでもいい。ニカラグアでもいいしパレスチナでもいい。そのことを少しでも正確に知る、あるいは知ろうと努力することがこの地球に生きている人間のつとめだと思う」の言葉を残して、姉は東京の大学へ。
妹・洋子は、姉の幻影?に取り付かれて、また姉は何故、その真相を見つけ出そうと姉と同じ大学に入るのだが、…。姉の運命を変えたのは、何だったのか。
あの学生運動とは、何だったのか、思想・革命、本来とは違う残酷な内ゲバの繰り返し…。
あるとき、やっと掴んだ孝史との生活も…。その孝史も、…。
妹・洋子がようやくたどり着いた場所で、自分の生きる意味を見出せたのか。愛する人を失い、やっと見つけたもの・幸福とは、…。
こうも思う。
私は言葉や机の上でなく、現実の中でタペストリーを縫い合わせているのだ。それが広がっていけばいくほど、あなたの糸はどこかにかすんでいってしまう。それでいいのだろうかと思いながらも、それを止めることができないでいる。それはローデシアという国がもうこの世界には存在していないのとよく似ている。ローデシアの解放の先にある悲劇を知らなかったのは、もしかしたら幸せだったのかも知れない。(本文より)
余談だが、この本に善福寺川が汚いイメージが表現されているが、今の善福寺川は、鯉が泳いでいてキレイです。善福寺川の川沿いの逼迫感、荻窪あたりはそんな感じもあるが、私は善福寺川に沿って散歩するのが好きです。そこには、四季の花々が咲いているし、可愛い鳥の姿も眺められるからです。