二人乗り
平田 俊子
07−108 ★★★★☆
【二人乗り】 平田 俊子 著 講談社 野間文芸新人賞受賞作
《何か不思議と引き込まれる作品、…》
出版社 / 著者からの内容紹介より
嵐子、不治子、そして道彦。
絡み合い、絶妙に輪舞するそれぞれの想いと因果。
*本作品は「輪舞構成」となっておりますので、何卒最後までお楽しみください。どうかひとつ。(編集担当)
嵐子さんの1日は午後2時に目覚まし時計をとめることからスタートする。わかってるわよ、何度も同じことをいわなくたって。母親の小言をさえぎるような調子で嵐子さんは時計の頭をぴしゃりと叩く。目覚ましが鳴ったからといってすぐに起き出す嵐子さんではない。寝返りをうったり左右の手を眺めたりしながら、しばらくベッドでぐずぐずする。<本文より>
平田俊子さんは、詩人らしいが読んだことはない。文体が変わったところもないのに、読み手をどんどんと引き込んでいくのだ。不思議な作品だ。平田さんの作品は、【ピアノ・サンド】を読んで、これで2冊目だ。
夫と別れて一人暮しの姉、夫に家を出て行かれた妹、妹の夫、それぞれの三人の立場にたった3篇からなっている。
「嵐子さんの岩」 (夫と別れて一人暮しの姉)
「二人乗り」 (夫に家を出て行かれた妹)
「エジソンの灯台」 (妹の家を出ていった夫)
絡み合い、絶妙に輪舞するそれぞれの想いと因果。(帯文より)
それぞれ結婚していて、一人になったときに感じるものは何か。
男と女、恋愛、結婚って何なのか。
3編とも良いのだが、「二人乗り」がいい、妹・不治子とこの街にやって来た女優・岡本葵のやりとりが切なくて何か楽しいのだ。
引き込まれていくのは、やっぱり平田さんが詩人で言葉使いが上手いのだろうか。