一瞬の風になれ 第二部
佐藤 多佳子
300 ★★★★☆
【一瞬の風になれ 第二部】 佐藤 多佳子 著 講談社
《走ることの楽しさ。意味なんかない。でも走ることが、単純に尊いのだ。(帯文より)》
出版社/著者からの内容紹介より
何かに夢中にだった、すべての人へ贈る青春小説
「最高だ」
直線をかっとんでいく感覚。このスピードの爽快感。身体が飛ぶんだ……。
少しずつ陸上経験値を上げる新二と連。才能の残酷さ、勝負の厳しさに出会いながらも強烈に感じる、走ることの楽しさ。意味なんかない。でも走ることが、単純に、尊いのだ。
「そういうレースがあるよね。きっと誰にも。一生に一回……みたいな」
今年いちばんの陸上青春小説、第2巻!
「簡単に比較はするな。陸上はずばり数字で出てくる競技だ。比較は簡単だ。だが、その選手の潜在能力は現在のタイムだけでは測れない。追いつこうとあせったらダメだ。そう簡単に追いつける相手じゃない。それでも、追いかけるんだ。盗めるものは全部盗め。真似られるところは真似しろ。おまえと一ノ瀬は違うタイプのライナーだから、いずれはおまえはおまえの走り方を追求していくことになるが、スプリントの基本ができあがるまではいくら真似してもいい。生きる教材だ。あれ以上のものは望めない。その点で、ウチの部員どもは、おそろしく幸運だ。……この話はいつもしてるな?」(本文より)
みっちゃんこと三輪先生が新二に陸上について諭しているところだ。このところを読んで中学時代のことを思い出していた。私が3年生のとき、体育館に集まった新一年生に向かって部活の説明をして勧誘するのだ。私は、卓球部のキャプテンだったので喋ったのだがあがってしまい何をどう喋ったのかわからないまま終わってしまった。そのときに陸上部のキャプテンが話したことが今でも残っているのだ。
『陸上競技というのは、球技とは違い、1日1日練習して記録・数字が出るのです。何秒縮めたとか、何cm飛んだとか、自分が日頃から努力したことが正直に結果として出てくる競技なのです。』ウーン、秀才の言うことは違うなと感心させられました。
2巻は、オフ・シーズンから2年生になり、1年生が入り、夏が終わり、新二もキャプテンになり、ほのかな恋愛?も始まり、しかし事件、事件が起こります。尊敬している兄が、プロサッカー選手になったばかりの兄が、…。
読んでいて、何だろう、何だろうか、このワクワク感は。
いじめもないし、上下関係の厳しさもない春高陸上部。
でも、読んでいて、ホロリ、ホロリと胸に込み上げてくる。
さあ、3巻だ。