悪人
吉田 修一
09−022 ★★★★☆
【悪人】 吉田 修一 著 朝日新聞社
《悪人はいないが、悪人という気持ちはだれでもあるのだ…》
内容紹介より
なぜ、もっと早くに出会わなかったのだろう――携帯サイトで知り合った女性を殺害した一人の男。再び彼は別の女性と共に逃避行に及ぶ。二人は互いの姿に何を見たのか? 残された家族や友人たちの思い、そして、揺れ動く二人の純愛劇。一つの事件の背景にある、様々な関係者たちの感情を静謐な筆致で描いた渾身の傑作長編。
内容(「BOOK」データベースより)
保険外交員の女が殺害された。捜査線上に浮かぶ男。彼と出会ったもう一人の女。加害者と被害者、それぞれの家族たち。群像劇は、逃亡劇から純愛劇へ。なぜ、事件は起きたのか?なぜ、二人は逃げ続けるのか?そして、悪人とはいったい誰なのか。
小説らしきものを久しぶりに読んだ。話題になったこの本が出てのが2年前か、いつも行く新古書店で安いコーナーに入ってくるまで待っていたのだから我ながら呆れる。吉田修一の作品は、好きだ。人間の持つ特有の匂いを書いているように感じるからだ。芥川賞を受賞した【パーク・ライフ】や【春、バーニーズで】でもボヨッとした中にも人間の持つ特有さを見出される。この本【悪人】でも、人間の持つ得体の知れないものを取られているように思う。誰でも子どものときに感情を何かしら背負って生きている。家族の温かさにある人でも大なり小なりそれは同じである。そこには愛されているという感覚がないからである。物質的に恵まれていても、心の中を充たしてはくれない。生まれもって《悪人》も《善人》いないが、《悪人という気持ち》も《善人という気持ち》はだれでも持って生まれてきているものだ。最後に救いを持ってきている光代を登場させて愛らしきものを経験させて人間を大きくさせている。
http://www.yomiuri.co.jp/book/news/20070502bk06.htm
吉田修一『悪人』公式サイト
http://publications.asahi.com/akunin/
公式サイトの九州の地図、フォトストーリを眺めながら、作家が何を見ながらドライブしたのだろうか。新聞小説だが、これは上手い。
川上弘美さんの書評を
http://www.yomiuri.co.jp/book/review/20070409bk0a.htm