深追い
横山 秀夫
★★★☆☆
【深追い】 横山秀夫 著 実業之日本社
《警察官も人間なのだ》
「深追い」
「又聞き」
「引き継ぎ」
「訳あり」
「締め出し」
「仕返し」
「人ごと」 7編
市郊外にある警察署を舞台にした7編の物語である。
警察署、組織の中の軋轢、キャリアとノンキャリアの確執等等、警察物語。
警察官を一番現している、こんな場面が「仕返し」にある。
警察官が官舎に帰ってくると、奥さんと子供がマスクメロンを食べている。
旦那が買ったのか、と聞くと息子の同級生の奥さんに頂いたのだと言う。
旦那は、返してこいと怒鳴るのだ。本文から会話のみを抜粋すると。
「何べん言ったらわかるんだ! 人から物をもらうなと言っただろう。今から行って返してこい」
「あ、でも、もう慶太も私も食べちゃったから。ラベル見たら、今日が食べごろだって書いてあったから」
「よく聞け。俺は公務員だ、警察官なんだ。世の中にはなあ、いざって時に、手心をくわえてもらおうって考えてる腹黒い連中が大勢いるんだ」
「ううん。浅野さんはそういう人じゃないから」
「なぜそんなことがわかる?知らないうちに利用されてたらどうするんだ」
「でも、好意でくれるって言うのに、私、断れない」
「だったら、警察官の女房なんてやめちまえ!」
「ねえ、やっぱり私、警察官の奥さんに向かないかなあ?」
「そんなことはないだろ。物をもらわなけりゃ、それでいいんだ」
「……わかりました。これから気をつけます」
「俺も言い過ぎた。すまん」
昔の公務員は物などをもらわないことが徹底していたと聞きます。
公務員は国民・市民の公僕なのですから、そういう意識が少なくなってきているようです。
この本を読むと警察官も人間なんだという思いを感じます。