幸福ロケット
山本 幸久
84 ★★★☆☆
【幸福ロケット】 山本幸久 著 ポプラ社
《最後の別れでコーモリはなにをいおうとしたのか、気になるなー。》
転校してきた小学5年生、クラスで八番目にカワイイ・山田香な子と深夜ラジオ好きでマユゲの太いコーモリ・小森裕樹の可笑しくて切ない初恋未満の物語。
こういう本は、好きだ。
物語もほんのりとして、悪党が出てこないし、哀しいこと一杯あるけど、皆けなげに生きている感じなのだ。日暮里からお花茶屋までの京成電車の中の出来事が出てくる、京成電車って何か他の電車と違う感覚を感じる。車窓から見る風景も他の電車とは違う、なんだろうか。庶民的?というか、そんな感覚を思い浮かべるのだが。
「面白いな、本って」ある日、コーモリがそう言った。もちろん京成本線の中でだ。
「本を読むといろんなひとの人生を楽しむことができるもんな」
なるほどと香な子は感心した。またべつの日にはこうもいった。
「本を読むのも楽しいけど、本について山田と話すのも楽しいもんな」そしてこうつけ加えた。「だからおれは本を読むんだとおもう」
うれしいこと、いってくれるじゃないの。
香な子もそうだった。塾へいくことも大事だったけど、帰りの京成本線の十分間はそれにまして大事なことになっていた。太>(本文より)