まほろ駅前多田便利軒
三浦 しをん
273 ★★★★☆
【まほろ駅前多田便利軒】 三浦 しをん 著 文藝春秋 直木賞受賞作
《まほろ駅、わたしも日曜日の午後に行ってます》
内容(「BOOK」データベースより)
東京のはずれに位置する“まほろ市”。この街の駅前でひっそり営まれる便利屋稼業。今日の依頼人は何をもちこんでくるのか。痛快無比。開巷有益。やがて切ない便利屋物語。
♪ミ ミ ミ ファ ミ レ レ レ レ ド レ ミ ♪
「あなたが噛んだ、 小指が痛い〜」 「噛んでない!」
あれ、これを書きたかったじゃないのかなー、とエッセイに抱腹絶倒な書き手の三浦さんのことだから。でも、こんなことを書くのもおかしい、深刻なことなのだから、これはいい本でした。
中略 二,三歳の女の子が、母親に抱えられてステップを降りる。すぐに歩きだそうとする女の子の手を、母親がつかんだ。
車から娘をかばうように車道側に立った母親は、女の子と手をつないで、住宅街のほうに道を折れた。(本文より)
近頃、感じるのは、何気なく車道側に親が立つということをあまり見なくなってきた、ということだ。こんなことは、当たり前で自然のことだが。三浦さんの車道側に母親が立つということで娘を想う気持ちが一杯に出ている。
訳ありな便利屋を営む多田啓介、その便利屋これまた謎的・高校時代の同級生・行天春彦が居候する。そこに持ち込まれる仕事は、ペットの世話、塾の送り迎え代行、納屋の整理、恋人のふりetc。その奥に隠されている現代事情には、いっぱいの物語が詰まっている。
イラストが章の始まりに載っているが、これってBLなの、美少年の…、いや違う男の友情、いや…、わからん、わかりません。
多田と行天の会話がおもしろい、二人の過去もこの本を熱くしていて読み応えを増している。