殴られ屋の女神
池永 陽
193 ★★★☆☆
【殴られ屋の女神】 池永陽 著 徳間書店
昨今は、格闘技ブームである。
ここ何年かブームが続いている。K1、プライド等々。人と人が殴り合い、それを見て楽しむ。観客は、昂揚し、血が湧き上がって体内を駆け巡る。我を忘れてしまっている。人間のもって生まれた宿命なのだろうか。哀れな人間たちなのだ。虚しいことだ。そういう私もテレビを見て、多少とも興奮している自分がいる。悲しいことなのもかもしれない。
【殴られ屋の女神】をどこかのブログに、この本を読む前まで【殴れ屋の女房】と思っていたと言うことが載っていたが、私も全く同じ思いをしていた。その思いの内容は違うのだが、そのブログでは弱い男の健気なカミサンということだが、私は殴られ屋の奥さんのことを書いてあるのか、と思っていた。この本の中味はちょっと違うのだが。
この殴られ屋というのは、話題になってニュースか何かになって知っていた。これを題材にして物語が出来たなのだろうか。
会社をリストラされ、妻に逃げられた主人公が恵比寿駅前に殴れ屋として立っている。「一発1000円、女性は半額、一発KOには十万円進呈!」。当然、学生時代にボクシングの経験があるからだ。
ここを訪れるお客を通して物語が進んでいく。主人公・須崎とマンションの居候先の若者・豊のことも書かれている。
人を殴りにくるお客はどんな人たちか、ストレスが満タンになった人か、そこには何かにとりつかれた人たちだった。
作品としては面白く読んで感じることがあるのだが、読んだ後何だか哀しいのだ。