ラジオ・エチオピア
蓮見 圭一
【ラジオ・エチオピア】 蓮見圭一 著 文藝春秋
《クラシックも聞かなくてはと思う。》
2002年、ワールドカップに始まり、終わった恋を
描いている。
小説家の男性(妻子有り)と翻訳家の女性(子有り)
との恋愛?(不倫)
音楽はモーツァルト、バッハのクラシックの題名が、
お酒はワイン数々の種類が、などなど頻繁に出てきます。
こういう本は、読み手の環境で評価が分かれる感じが
しますが、音楽もお酒もわかりませんが、大人の恋は、
わかるような気がします。下記の文が全てを現している
います。女性が男性に宛てた最後の方のメールです。
ゲーテが書いていたわね。生活はすべて次の二つ
から成り立っている。したいけど、できない。でき
るけど、したくない……みたいなことを。私は、
したいことは必ずできるはずだし、したいと念じ、
一生懸命にやれば叶うはずと信じてきた。現実には
なかなかそうはいかないけれど、だからといってくじ
けて諦めるのじゃない。それなのに、あなたは平気
で「世の中にはどうにもならないことがある」と言う。
どうにもならないことなんて、この世にあるのか
しら。もしそう感じのだとしたら、それは何かをし
ようとせず、あるいは臆病になって現状を維持した
いからだけだからではないの?そういう意味で言った
のではないと思うけれど、安易に言うあなたのその
不用意さ、無神経さ、整合性のなさが私を苛立たせ
る。
本当にしたいこと、そしてしなければいけないこ
と、それは自分が望んでいるのとは別のところにあ
るのかもしれない。ふと、そんなふうに感じた。で
も、それも、ゆっくりと休んでから考えることにし
たい。偉そうなことを言っておいて、私も結論を先
延ばしにしているのかな。ともかく、いまは眠りた
い。いまはただ何ものからも解放されたい。
(本文より)